摂食障害患者には身体像の歪み(身体サイズの認知に片寄りがある)が認められることは先行研究により明らかとなっている。また筆者が考案した身体描画法により抽出された身体像の歪み量は摂食障害傾向と関連があることが見出された。 そこで健常者における身体像の歪み量と摂食態度との関連の有無を身体満足度や身体関心度など身体に纏わる概念との関連を考慮して検討した。対象は18歳〜23歳の青年期女性であった。本人の写真を基準としたときの自画像の描画の身体サイズを比率で表して身体像の歪みの指標として用いた。身体像の歪み量と摂食障害傾向を調べるEAT-26の得点、および身体満足度、身体関心度を調べる質問紙の得点を132名のデータを基に相関分析を行った。その結果、大腿幅や腰幅などを中心とした身体の幅の歪みと身体満足度が有意な負の相関を示し(相関係数;-0.35〜-0.20)、身体満足度が身体関心度と有意な負の相関関係にあり(相関係数;-0.62)、また身体関心度が摂食障害傾向と有意な正の相関がある(相関係数;0.34)ことが認められた。これらを総合的に考察すると、身体に対して満足度が低い対象は大腿を中心とする身体幅の認知を過大評価してしまい、実際よりも大きく描く傾向が窺われた。そして身体に対する不満感は、身体に対する強い関心を生み、それが摂食態度の混乱を招いているのではないかと推察される。ここで摂食障害患者の場合には摂食態度と身体像の歪みが直接的に関係していることと比較すると、健常者の場合には身体像の歪みと摂食態度とは直接的に関係しているのではなく、自身の体に対する低い満足度が幅の認知を過大評価させ、また低い満足度が体への関心度を強くさせ、それが摂食態度の混乱に繋がるという間接的な関係にあることが推察された。
|