筋線維の種類によって微小循環-筋細胞レベルの酸素交換の動的応答性が異なることに着目した。運動時における筋線維動員パターンを時間・空間分解能に優れた近赤外分光装置で推定する方法を提案した。脱酸素化Hb+Mb(HHb)は血液量変動の影響を受けにくく、酸素消費量(VO_2)と毛細血管レベルの血流量(Q)のバランス(VO_2/Q)を反映するので、鏡像関係にある微小循環PO_2(Q/VO_2)の動的応答を推測できる。動物筋線維の酸素交換特性を基にして、運動開始後におけるHHbの応答特性から動員される筋線維を推定した。応答特性解析プログラムを用いて、HHbの応答遅れ時間、時定数と増加量(振幅)を求め、遅れ時間が長く、増加速度(時定数)が遅い、かつ運動終了時の増加量(振幅)が小さい部位を遅筋線維とした。一方、応答が速く、振幅が大きい部位をtype IIの速筋線維とした。以上の測定から、活動筋の筋線維動員パターンと酸素不足、筋肉疲労の関連について考察した。 連続波近赤外分光装置(NIRS)を用いて、ヒトの外側広筋と大腿直筋におけるHHbとその局所的な分布・不均一性を連続的に測定した。連続波NIRS法では、光路長、散乱と吸収の係数を一定と仮定するので、ベースラインからの相対変化しか観察されない。そこで、時間分解NIRSを用いて、光路長、散乱と吸収の係数を実測し、HHbの絶対値を測定した。連続波NIRSで得られたHHbの相対変化を参考にして、動的応答が遅い部位と速い部位のHHb絶対値を時間分解NIRSで計測した。
|