研究分担者 |
長野 真弓 九州大学, ユーザーサイエンス機構, 准教授 (10237547)
中野 裕史 中村学園大学, 人間発達学部, 講師 (60301678)
西地 令子 聖マリア学院大学, 看護学部, 助教 (30413636)
諏訪 雅貴 東北工業大学, ライフデザイン学部, 講師 (50464392)
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研究概要 |
本研究の目的は,まず身体活動や一過性の運動に伴う血清BDNFの変動の意味を明らかにするとことである.次に,脳由来神経栄養因子(BDNF)の慢性投与が骨格筋のミトコンドリア生合成および糖取り込み改善などの代謝特性に影響を与えるのかを調べる.このように,動物およびヒトを対象に検討を加えることで、本研究ではヒトを対象とした血清BDNFの運動生理学的意義を検討することにある.検討課題は以下の3つである.研究1.身体活動量および体力と血清BDNFとの関連性に関する研究.研究2.一過性の運動による血清BDNFの変化.研究3.BDNFの慢性投与に伴う代謝特性の変化と一過性投与に伴う代謝制御に関わるシグナル伝達経路の解明.研究1では,健康な成人男性において,身体活動量(エネルギー消費量)と血清BDNFとの間に有意な負の相関を報告した。研究2では,健康な成人女性において,一過性の運動に対する血清BDNF水準の変化には強度依存性があり,中等度以上の運動で運動直後に増加していることを明らかにした.また日常的な運動習慣が,特に疲労困憊まで至るような高強度の運動において,運動終了後の血清BDNF水準の動態に影響を及ぼすことも確認した.一過性の運動による血液中のBDNFの増加がどの組織に由来し,増加が何に働いているのかは不明である.しかし運動により全身を循環するBDNFが増加することは,組織で利用できるBDNFの増加につながり,それが運動による認知機能やうつ,代謝の改善に寄与しているのかもしれない.研究3では,ラットに対して慢性的なBDNF投与を行った結果,節食抑制に伴う体重減少および骨格筋における糖輸送担体蛋白(GLUT4)の増加を確認した.以上の成績より,BDNFの多様な生理機能を解明するとともに,血清BDNFへの一過性の運動の影響を解明できた.
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