医療分野における特有の組織文化を考慮した形で、組織における安全性の向上を意図した活動としての研修・教育プログラムと、組織全体の安全性の基盤をなす成員の安全にかかわる「意識」との関連性を実証的に把握するため、具体的には、名古屋大学において、2005年において施行された医療安全研修時のアンケートと、2008年の集中的研修施行後のアンケートにて介入の効果がどの程度浸透したかについて、統計解析を行った。設問が5段階の離散データで正規分布をあてはめることができなかったので、正規分布を前提としないノンパラメトリック法のなかでも2群間の差異を検定するときに用いるMann-Whitney検定を用いて、2005年と2008年のアンケート調査の比較を行った。その結果、設問のなかでも、「私は幹部が決めたことに疑問をさしはさまない」「私は幹部が決めたことに疑問をさしはさまない」「患者も医療安全の向上のために一定の役割を果たすべきだと思う」「当院では安全が組織の最優先課題とされている上司や同僚に対して異なる意見を述べるよりも賛成することのほうが望ましいと思う」「当院の幹部は、全職員が安全を心がけ、かつ安全に関わる規則を守るよう推進している」「職員は安全にかかわる規則違反や安全を犯すような危険な行為や状況を進んで報告する」「職員は安全にかかわる規則違反や安全を犯すような危険な行為や状況を進んで報告する」「患者安全に関する決定は適切なレベルの最も適任の人々がおこなっている」「自分の部署でミスをした職員は、必ずミスを報告している」において統計的に1%有意水準で2008年の結果の方が2005年の結果より改善していることが判明した。
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