天然物由来の材料を組み合わせて、生体適合性があり皮膚が直接触れても安全な新規材料、すなわちヒューマンマテリアルを作る。そして、将来これらの材料の使用感をものづくりにフィードバックするための人間の計測機能と機器分析データの相互補完システムの構築を目指した。 ヒューマンマテリアルとして、捲縮加工したラミー繊維のウェッブに、伸長特性を付与する目的でポリウレタンのナノファイバーを積層させた試料を作製し、伸長特性評価を行った。その結果、少量のポリウレタンナノファイバーでラミー繊維ウェッブの伸長特性が大きく向上し、また伸長のヒステリシスも小さくなることがわかった。水溶性卵殻膜(S-ESM)とポリビニルアルコール(PVA)または、ポリエチレンオキサイド(PEG)を混ぜ、エレクトロスピニング法で紡糸するための最適条件を見つけた。またこれらのウェッブはカテキンで処理することで水に不溶な材料になることもわかった。しかしながら、紡糸条件を見つけるのが困難であり、試料も少なかったため、物性試験までにはいたらなかった。これらの試料作製と平衡して、マイクロファイバーからなる布を試料とし、視覚情報と触覚情報の補完が材料評価に及ぼす影響を調べる官能検査を実施した。その結果、色の影響よりも触感の影響が大きく、手で触った時のマイクロファイバーの動きが快適な肌触り、しっとり感に大きく寄与することがわかった。そこで、ナノファイバーを含む本実験で作製した試料について、同様の検査を計画した。その際試料の量、強度の面で、官能検査に用いるための課題が明らかになった。昨年作製した羽毛を粉砕して作ったパウダーをコーティングしたフィルムは、基礎実験より水分吸収によって摩擦係数が増加することがわかったため、濡れた手でさわった時の滑り止め効果を調べるための実用試験を継続中である。
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