本研究では、大豆製品加工の途中に発生する未利用水溶性画分に多く含まれるprotease inhibitorの一種であるBowman-Birk Protease inhibitor(BBI)を主成分とした食素材をベースにした中皮腫予防食の開発を目指して、BBIが主成分として含まれる画分を粗精製し、その試料の機能性{癌抑制遺伝子コネキシン43(Cx43)遺伝子誘導能と癌抑制機能}をin vitroで主に評価し、中皮腫予防成分としてのBBIの可能性を明らかにする。 Cx43は中皮腫において癌抑制遺伝子として作用していることが確立されているので、代表的なヒト中皮腫細胞であるH28細胞とSV-40で発ガンプロモーションをかけた非腫瘍性中皮細胞であるMet5A細胞を用いて、BBIの有効な細胞増殖抑制濃度と癌抑制遺伝子であるCx43の機能回復との関係を解析した。その結果、両細胞ともに、用量依存的に細胞増殖の抑制が認められたと同時に、Cx43機能の回復も認められた。さらに、BBIにより誘導されるCx43をアンチセンスで抑制した場合、BBIによる細胞増殖抑制効果が一部緩和されることが示され、BBIによる中皮腫抑制効果は、一部Cx43の機能回復が関与していることが示された。また、中皮種におけるCx43機能回復の作用機構の1つとして、BBIの持つchymotrypsin阻害活性がCx43の主な分解系であるプロテオソーム中のchymotrypsin様のタンパク分解活性を阻害することが関与していることが明らかになった。 これらの結果は、最終的にin vivoでの解析結果を待たなければならないが、BBIが中皮腫の予防食素材として有用であることを示している。
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