1)実験型教育システムを開発する中で、現場の教員や実務家との意見交換を経て、信頼あるいは信用に関るより総合的な教育が必要との考えに至った。これを「信頼リテラシー教育」と名付け、その教育体系構築について検討した。検討項目は以下のとおりである。(1)信頼リテラシー教育の定義、(2)信頼リテラシー教育が必要であるとする理由、(3)信頼リテラシー教育の内容、(4)信頼リテラシー教育の対象、(5)信頼リテラシー教育の担い手、(6)信頼リテラシー教育構築の担い手。 2)「信頼リテラシー教育」の当面の定義をつぎのとおりに定義した;信頼について、自分の力で具体的に考え、判断する能力を育てる教育。世間の常識や過去の経験だけにとらわれずに、幅広い視野で合理的・客観的に信頼をとらえことを基礎とする。 3)「信頼リテラシー教育」の必要性については、以下の3点について検討した。(1)情報化、(2)グローバル化、(3)経済の高度化と社会の複雑化。 4)「信頼リテラシー教育」の教育内容としては、以下の3点について検討した。(1)信頼の機能と価値の認識;(2)信頼に関するシステム思考;(3)信頼に関する矛盾と葛藤。 5)「信頼リテラシー教育」の対象は、小中学生から大学生・社会人に至るまで幅広く設定した。小中学生に対しては、社会における信頼の価値と機能を認識することに重点を置き、大学生や社会人では、信頼に関するシステム思考など、より複雑な主題に重点を置くことを検討した。 6)「信頼リテラシー教育」の検討経過については、2件の発表(海外1件、国内1件)をし、論文(邦文)を1件発表した。海外における発表に対して、東南アジアの研究者からアジアと欧米では信頼についての考えが大きく異なることが指摘され、信頼を科学的・客観的に捉えようとする「信頼リテラシー教育」への賛同が示された。 7)高専3年生を対象に「信頼リテラシー教育」を試行した。
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