本研究の最終的目的は、外国語習得を促進する協同学習のメカニズムをバイオフィードバックにより検証することにある。20年には、単独学習時と協同学習時(英語母語話者と学習者の対話)を比較する実験を行い、教室環境での協働学習の意識を調査した。21年度は質的・量的データの統合的解析を試みた。 <当該年度の研究成果> 協同・協働とは何かを再定義し、脳血流量に変化が現れる活動を探索した。統合的分析は、脳活動が活性化するタスクと作業時間を絞り込んだ後に行うことにした。 1. 対話相手の有無による脳左右側頭部の血流変化(木下ほか、2009) 血流量変化チャンネル数を従属変数に、協同性と脳の部位を独立変数として、2元分散分析を行った。その結果、1) 単独リサイタル課題に比して、協同性が高い対話課題の方が活性化するチャンネル数が有意に多いこと、2) 協同性が高まるにつれ、右脳の方がより活性化する傾向があることが示唆された。脳機能局在説が一部裏付けられた。 2. 協働学習に特有の因子の心理的実在の探索:予備的実験(木下ほか、2010) 協働学習に特有な因子を抽出するための予備的分析を行った。L2単独スピーキング課題遂行時の脳血流量データに対して探求型因子分析を行い、協働作業ではない場合の因子構造を探った。脳活動がどの部位に現れるか予想が立てにくいため、全頭型プローブタイプを装着し、左右側頭部と前頭部の血流量を測定した。因子分析は、実験参加者10名中、ノイズが少なくパターン判定が良好な1例、21チャンネルのデータに対して行った。その結果、有効な因子(累積分析説明率87%)として、前頭部(ワーキングメモリや高次連合野に関連が示唆される)、左右前部に近い側頭部、左側頭部ブローカ野付近の言語野が抽出された。 3. 英語を学ぶ教室環境における学生と教員の協働学習意識を調査した(西尾、2010)。 現在、音声分析と会話分析(言語・非言語)に取り組んでいる。22年度中に結果を発表する予定である。
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