研究概要 |
本課題は,高山帯景観が卓越する地域における可搬型の風速観測装置の開発を目的とする。今年度の研究計画は,昨年度までに一応完成した観測装置の動作状況を野外で確認し,実用レベルの改良を加えることである。中部山岳における無雪期(夏季)の観測待機期間中には,残念ながら強風観測試験が可能な天気には恵まれなかった。秋季以降は観測候補地を東北山地に移したが,早めの積雪により山地上部へは通行不能となった。そこで装置改良に重点を変更し,冬季からは鳥海山の西麓部で冬型気圧配置による強風事例を待つことにした。この冬は稀に見る多雪状況となって標高1000m以上の領域では設置地面が確保できなかったが,海岸部の強風卓越地において1/21-23,2/1-3,2/6-8,2/19-21,2/26-28の5回の観測を行った。その結果,観測装置の機械的な改良点は,センサ取り付けアームの補強とそれに伴うアース線(接地)の追加であった。また,風速では野外観測ではほとんど例の無い地上5cm高の値を得た(他に25,75,150cm高)。弱風時にはこの4高度の風速値には大きな差は出ないが,150cm高で10m/s(瞬間値)程度の場合には,5cm高の値は25cmと大差無いものの150cm高の値の半分弱程度となる傾向が認められた。これについては今後,詳細な解析を加える予定である。高山帯稜線部の強風卓越地では,積雪が20cmを超すことは稀であると考えられるので,パッシブセンサによる積雪深計を追加すれば,冬季に比較的長期間の解析に有効な風速の無人観測が可能であることがわかった。残る課題は安定した電池式の電源ユニットの開発であろう。
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