H21年度は、以下の項目を実施した。 実海域における実証試験の実施 生物生産が高く脱窒の起こっている外洋の親潮海域ならびにオホーツク海において、広域範囲にわたる窒素、アルゴンとラジウムの高頻度サンプリングを実施した。H20年度に完成した方法(海水中の窒素の過剰量と、ラジウムによる海水の滞留時間を組み合わせた方法)を用いて、窒素、アルゴンとラジウムに基づく脱窒速度の見積りと、これまでに定性的であるがよく用いられてきた脱窒の指標N^*を比較したところ、外洋域においては時空間的に有意の差がなく、よく一致していることを明らかとした。 さらに、この方法に基づき、親潮域をバックグラウンドとし、オホーツク海との窒素過剰量の差を取るとともに、ラジウムから推定されるオホーツク海の滞留時間を組み合わせて、オホーツク海の全域の脱窒速度の平均場を求めた。その結果、オホーツク海の全脱窒速度は約0.39~1.02T mol/年であり、世界で最も大きな脱窒海域アラビア海の2.92T mol/年に次ぐほどの大きな脱窒海域であることを定量化し、北太平洋の窒素循環に大きな影響を与えていることを明らかとした。このことは、今後の温暖化によって、オホーツク海の窒素変動が北太平洋の窒素循環に多大なインパクトを与える可能性をも示唆した。 この結果は、2010年3月に行われた日本海洋学会で発表し、その内容を査読付英文学術雑誌に投稿するため現在執筆中で、近日中に投稿する予定である。
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