平成20年度は、現在試作中の小型断熱消磁冷凍機でTES型マイクロカロリメータを動作させる方法を確立することを目指して研究を進めた。真空断熱容器の製作に想定以上に時間がかかったため、研究実施計画に従って断熱消磁部分を既存のテストデュワーに設置して、コンポーネントレベルでの試験を実施した。その結果、超伝導コイルに8A以上の電流を流して励磁を行なう方法を確立できた。ただし断熱消磁を行なっても十分な冷却効果が得られず、X線マイクロカロリメータの動作には至らなかった。平成21年度の早い段階で原因を究明し新しい真空断熱容器でのX線マイクロカロリメータ動作の確立を目指す。当初の予定よりは遅れているものの、可搬型の微量環境放射線計測装置の実現に向けて重要な一歩を踏み出すことができた。以上の研究成果と開発の進捗状況については、日本天文学会の秋季年会と春季年会にて発表した。並行して、X線マイクロカロリメータ読み出しに使用する超伝導量子干渉素子(SQUID)の動作試験を、液体ヘリウムに浸して使用する簡易プローブを自作して実施した。ニオブによる超伝導シールドを施すことで、SQUIDとしての磁束-電圧特性を得ることができ、動作を確認できた。また、使用するX線マイクロカロリメータについての検討も行なった。TES型X線マイクロカロリメータにガンマ線用の吸収体を取りつけたものが第一候補であるが、磁気量子型のX線マイクロカロリメータも入手可能な状況にあり、ガンマ線に対する検出効率の観点から候補となりうることがわかった。引き続き検討を行ない、本研究に最適なX線マイクロカロリメータを使用できるようにする。
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