研究概要 |
本研究では、環状オリゴ糖であるβ-シクロデキストリンの6位水酸基をtert-ブチルジメチルシリル化したヘプタキス(tert-ブチルジメチルシリル)-β-シクロデキストリン(TBDMS-β-CD)を吸着材に用いて、絶縁油中の塩素化ベンゼンならびにPCBに対する吸着能について検討した。1,2,4-トリクロロベンゼン(1,2,4-TCBz,90ppm)が溶解している絶縁油242mg中にTBDMS-β-CDを所定量添加し、室温で15時間振とう後、絶縁油と沈殿を分離した後の絶縁油中のTCBz残存率を求めた。TBDMS-β-CDの添加量が増加することにより、1,2,4-TCBz除去率は増加し、18mg以上添加することで絶縁油中のTCBzが完全に除去されることがわかった。また、この沈殿をヘキサンで洗浄することにより、除去されたTCBzが70%以上の収率で回収できることも明らかにした。このTBDMS-β-CDを用いて、絶縁油中の種々の塩素化ベンゼンならびにPCBに対する吸着能を調べたところ、1,2,4-TCBzに加え、1,3,5-トリクロロベンゼン、4-モノクロロビフェニルに対して高い吸着能を示すことがわかった。さらに、立体障害の小さな2-モノクロロビフェニルや4,4'-ジクロロビフェニルに対しても良好な吸着能を示すことがわかった。一方、3,4,4'-トリクロロビフェニルなどの3塩素化物以上のPCBに対しては吸着能が大きく低下した。TBDMS-β-CDの空洞サイズがそれらのPCBの分子サイズよりも小さいため、吸着できなかったと考えられる。今後、β-CDよりも空洞サイズが大きなγ-CDの誘導体を吸着材に用いてPCB吸着能の検討を行う計画である。
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