研究概要 |
γ-シクロデキストリン(γ-CD)がチャンネル状に配列した集合体(チャンネル型γ-CD)を吸着剤に用いて、絶縁油中の塩素化ベンゼンならびにポリ塩素化ビフェニル(PCB)に対する吸着能について検討した。チャンネル型γ-CD(180mg)を用いることで、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロベンゼン、2-モノクロロビフェニル、4-モノクロロビフェニル、4,4'-ジクロロビフェニル、3,4,4'-トリクロロビフェニル(各100ppm濃度)をほぼ完全に絶縁油(300mg)中から除去できることが分かった。その一方で、より立体的にかさ高い3,3',5,5'-テトラクロロビフェニルはほとんど除去されなかった。前者の塩素化ベンゼンならびにポリ塩素化ビフェニルの分子サイズがγ-CDの空孔サイズに適合しているのに対して、3,3',5,5'-テトラクロロビフェニルの分子サイズはγ-CDの空孔内に取り込まれるには大きすぎると考えられ、γ-CD空孔内への塩素化芳香族化合物の包接が絶縁油中のそれらの吸着に関与していることがわかった。また、吸着後のチャンネル型γ-CDをn-ヘキサンなどの有機溶媒で洗浄することにより、吸着した塩素化芳香族化合物の約70%を回収できることが明らかとなった。 さらに、γ-CDをテレフタル酸で架橋したCDポリマーを合成し、これを吸着剤に用いて絶縁油中の塩素化ベンゼンならびにPCBに対する吸着能について検討した。興味深いことに、この吸着剤を用いることで、トリクロロベンゼンに加えて、検討したすべてのPCBを絶縁油中から完全に除去することができた。また、実際に保管されているPCB汚染絶縁油中のPCBも完全に除去でき、絶縁油中に混入しているPCB除去にきわめて効果的であることがわかった。
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