研究概要 |
紫外光電子磁気円二色性は当研究室で開発中の新たな薄膜磁気特性評価法であり、現在光電子顕微鏡を用いて空間分解能50-100nm程度の磁気イメージングが可能となっている。この方法は、仕事関数しきい値近傍の光電子が極端に大きな磁気円二色性を示すことに基づいている。本萌芽研究ではSTMチップをプローブとして全く新たな磁気イメージングを開発し、空間分解能で1nmあるいは原子レベルまで到達することを目的としている。ここで問題となることは、STMチップを用いて高い空間分解能を示すためには、STMチップを近づけた位置で仕事関数が局所的に低下するかどうかである。平成21年の初頭に、放射光誘起STMの研究成果が報告され、その成果においてSTMチップが近づくことで局所的な仕事関数が変化していることが示唆された。したがって、本研究で目指している紫外光を用いた仕事関数しきい値近傍での観測が実現できることが期待される。 本年度は初年度であり、目的の前段階として、STMシステムにおいて作成した磁性薄膜を評価するために最も簡便な手法である磁気光学Kerr効果測定槽を、本科研費その他を用いて製作した。また、測定室にHeCdレーザーあるいは波長可変Ti:sapphireレーザー(2,3,4倍波)を導入する光学系を構築した。極めて挑戦的な課題であるため、残念ながらまだ成果は挙がっていないが、関連した二光子光電子磁気円二色性においては大きな成果があった。
|