真空蒸着法を用い、ガラス基板上にアルミニウム薄膜を作製した。電子顕微鏡観察により数10nmの粒状構造を基本とした膜の上に、100〜300nm程度の比較的大きな粒子が点在していることを確認した。次にホットスポットによる電場増強を、膜としての増強と切り分けて議論するため、直径20nmと200nmの2種類の蛍光ビーズを用いて測定をおこなった。しかもあらゆるホットスポットを検出対象とするために、水溶液中をブラウン運動する蛍光ビーズを観察した。光源としては波長375nmの半導体レーザを使用した。200nmのビーズの場合、アルミニウム薄膜上では、ガラス上と比較して約4倍の蛍光強度を確認した。ただし、これはアルミニウム膜表面からエバネッセント領域の深さにわたった広い領域での電場に対する増強度であり、膜としての電場増強とホットスポットとしての電場増強の両方を含んでいる。20nmのビーズを用いて同様の実験をおこなったところ、アルミニウム膜上ではガラス基板上よりも9倍の蛍光強度の増強が確認され、ガラスに対する増強度として2倍以上の有意な違いが見られた。 膜を形成している粒状のアルミニウム、あるいは比較的大きなアルミニウム粒子がホットスポットとして機能する場合、粒子間の空隙は数10nm以下である。すると20nmの蛍光ビーズはブラウン運動中にこのような空隙に入り込み、ホットスポットによる蛍光増強を受けて強い蛍光を発することができる。一方、200nmのビーズの場合は、その大きさゆえホットスポットの強い電場を感じることはできない。以上のように20nmと200nmビーズの測定結果の違いから、ホットスポットにおける蛍光増強度の大きさ(増強度の下限)を推定できることがわかった。
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