研究概要 |
微細加工技術の発展によって, 様々な高感度マイクロセンサが開発され, その性能は熱ノイズによって制限される水準に達しており, その性能向上には冷却が極めて有効である。特に小形化や携帯化が求められる用途では, ペルチェ素子による冷却, 小形スターリング冷凍機ぐらいしか利用できる冷却技術はない。しかし, 前者は効率が低く, 後者は作動流体を圧縮・膨張・加熱・冷却する複雑なシステムであり, マイクロ化に向かない。そこで, 新しい材料であるメタ磁性体を用いた磁気冷凍機をマイクロ化する研究を行う。我々が提案するマイクロ磁気冷凍機は, 低温部, メタ磁性体, および高温部を熱スイッチ(熱フラックスをオン/オフできるスイッチ)で繋ぎ, さらに永久磁石の移動でメタ磁性体への磁場をオン/オフするシステムである。本研究は, マイクロ磁気冷凍機の実現に必須のマイクロ熱スイッチを開発し, これを用いて高性能マイクロセンサを局所的に冷却するマイクロ磁気冷凍機の実現性を実証することを目的とする。平成20年度は, マイクロ磁気冷凍機を実現する上でのキーテクノロジとなるマイクロ熱スイッチとして, 水銀滴を静電力またはエレクトロウェッティングによって駆動する方式を研究した。様々な電極形状の水銀滴アクチュエータを試作し, 大変位を確認したが, 絶縁層のチャージアップのため水銀駆動の再現性が低いこともわかった。また, マイクロ熱スイッチの接触子として, カーボンナノチューブの絨毯状シートを検討し, その接触熱抵抗を測定した。これらの結果, カーボンナノチューブを用いたマイクロ熱スイッチが有望であることがわかった.
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