将来のデバイスとして期待されるカーボンナノチューブトランジスタの実用化を目指し、中性粒子ビーム表面処理によるカーボンナノチューブ構造や電気的特性制御に関する研究を推進している。 カーボンナノチューブを用いた電子デバイス開発における最大の課題は、ナノチューブ自体の欠陥制御やナノチューブへの不純物ドープ、構造制御(金属と半導体の選択生成)である。そこで本研究では、寒川等が開発した高効率・低エネルギー中性粒子ビームを用いることで、カーボンナノチューブの無損傷超高精度表面処理やドーピングを可能とし、カーボンナノチューブ内欠陥の制御・抑制、構造制御を実現することを目的としている。 平成20年度はアルゴン、窒素原子(中性粒子)ビームを用いて各種ビーム照射エネルギーにおける欠陥密度、構造の変化を調べた。アルゴンビームによる照射はビームの運動エネルギーを数eV〜数十eV程度の低エネルギーで照射することで、3.5eV以上のエネルギーをもつビーム粒子によってカーボンナノチューブの損傷が生じていることが分かった。また、窒素ビームによる照射では、化学的な作用により、3.5eV以下の低エネルギーでも欠陥が生じることが明らかとなった。一方、これら表面改質されたカーボンナノチューブを用いたカーボンナノチューブトランジスタの電気特性を評価したところ、窒素ビームによる窒化によりカーボンナノチューブのN型半導体化の可能性が観測された。
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