本研究は、新たに提案した計測原理による埋設金属物体の非破壊検査技術の開発(正確な位置推定、埋設物の画像化)を目的として、今年度は以下の内容を実施した。 ・試作した精密実験装置を用いた実験的に位置推定精度を検討した。現状の空心型コイルを用いる場合、深さ40mmまでの鉄筋を誤差4mm以内で推定可能である。しかし、深い鉄筋の検出ではSNが悪いことやさらに深い鉄筋を推定するためには、印加磁界強度を強くしなければいけないことが分かった。 ・印加磁界強度を上げるために、コイルに鉄心を用いた場合の影響について有限要素法を用いたシミュレーションを行った。この結果、鉄心を用いることにより印加磁界は約4倍増えることが分かった。この結果、検出される信号は十数倍増えることが分かった。しかし、実験結果とシミュレーション結果では、30%程度の誤差があり、更なる検討が必要である。 ・有限要素法を用いて、ダブル配筋の推定の検討を行った。実際の建築現場で利用されるダブル配筋の状態を調べ、シミュレーションによる検討を行った。実際の利用条件では、2つの鉄筋の深さの違いが大きく、浅い鉄筋の信号に深い鉄筋の信号が埋もれて判別が困難であった。理論的には、ダブル配筋の推定が可能であるため、今後適応可能範囲を検討する必要がある。 ・昨年度、第2世代の検出コイルとして、新たに提案したインピーダンス計測法による、高い感度を有するコイル(コイルのQが高い)を開発した。その結果、簡易的なコンクリートモデルならびに実際の建築物の床スラブに類似したコンクリートモデルにおいて、埋設された鉄筋と銅線によるインピーダンスの増加、鉄筋による位相の進み、銅線による位相の遅れが確認できた。これにより、埋設された鉄筋と配線の検出が可能であり、さらに位相により両者の弁別が可能であることが分かった。
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