ヒトの重要な遺伝子にしばしば見出される10万塩基を超える巨大なイントロンが、どのような機構で正確にスプライシングされるかは現在のところまったく分かっていない。私たちはイントロン内部のスプライス部位に似た配列でスプライシングが起こっている実験的状況証拠を得ており、巨大イントロンのスプライシング機構として『イントロン内スプライシング(Nested intron splicing)仮説』を提唱しており、その仮説の証明が本研究課題の目的である。初年度(平成20年度)は、ジストロフィン遺伝子の巨大イントロン7(約10万塩基)を用いて『イントロン内スプライシング仮説』を検証を最優先に行った。今のところ以下の結果を得ている。 RT-PCR法により部分的に検出したスプライシング特異的産物であるイントロン7の投縄状RNAは、3'-5'エクソヌクレアーゼ(RNase R)処理後も検出できたことから、巨大イントロン7はスプライシングの過程でY字構造ではなく、投縄状構造をしていることが示唆された。その投縄状RNAの全体をRT-PCR(RNase R処理後)や、RACE法で検出しようと試みたが、残念ながらうまくいかなかった。そこで、研究計画書で記載したように、投縄状RNAの蓄積を期待して、siRNAによって脱ブランチ酵素発現を抑制し、そのRNA標品を用いてRT-PCR法を行ったが、やはり長い領域での投縄状RNAの検出はできなかった。以下のような可能性が考えられる。(i)イントロン7の投縄状RNAが非常に短く、スプライシング特異的産物に設定したプライマーでは検出できない。(ii)イントロン7の投縄状RNAが逆に非常に長く、PCRで増幅されない部位は、二次構造などのため、逆転写酵素が伸長しない。両方の可能性を同時に検証するため、RNase R処理した全RNA標品と、検出できたスプライシング特異的産物の放射性標識RNAをアニールさせ、変性ゲル電気泳動によりスプライシング特異的産物の長さを検出する計画をたてている。
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