研究概要 |
本年度はキンランの根系内における菌根の形成状況と,定着する菌根菌を明らかにすることを目的とした。3調査地からキンランの乱獲を出来る限り防ぐため2種類の方法で行った。根系をすべて採取する方法によって合計7個体,根1本を採取する方法によって合計12本の根を採取した。根系すべてを採取した試料は菌根形成率算出と菌根菌の推定に,根のみを採取したものは菌根菌の推定のみ使用した。採取した根系は,根の伸長方向から水平根,垂直根,その間の斜出根に大別し,根元から2cm長の断片とし,各断片をさらに20から30の切片にした。切片はコイル状菌糸体(ペロトン)の有無を確認し,ペロトンが確認された場合にラン菌根の形成があるとし,その形成位置を断片単位で記録した。菌根形成を確認した断片の全断片に占める割合から菌根形成率を算出した。菌根菌の推定はゲノム抽出を行った後,ITS領域のPCR増幅,シーケンス解析を行い,得られた塩基配列は,Blast検索によって菌の推定を行った。1個体を除くすべての個体で,菌根の形成が認められ,キンランは普遍的に菌根形成されると考えられた.また各根の伸長方向別の菌根形成率では,水平根において高い傾向を示した.定着する菌根菌は,7個体からイボタケ科,3個体からロウタケ科と最も類似した。イボタケ科とロウタケ科は樹木にも菌根を形成する.このことから,キンランでは,新たな菌根形成は根の先端側で起こり,関係する菌根菌は菌糸を通した樹木とのつながりがあるものと推察された。
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