本研究の目的である戦後沖縄における沖縄経験と日本経験について、特に第II期(1960~1970)を中心にして、雑誌や新聞論説などの資料の収集と分析の作業をおこなった。 具体的には、東京への出張を合計5回実施し、主に国立国会図書館にて資料の調査をおこなった。また、福岡市の九州大学附属図書館へも調査をおこない、島根県浜田市において、連携研究者である飯田泰三島根県立大学教授と資料の検討と研究報告をおこなった。 そのような成果として、小屋敷琢己「戦後日本の〈沖縄経験〉」という論文と、比屋根照夫『戦後沖縄の精神と思想』という著作が刊行された。 小屋敷論文では、戦後日本の知識人における「敗戦の経験」、〈沖縄経験〉の欠落などについて指摘され、沖縄の問題を論じるためには、それぞれの〈沖縄経験〉が試されていること、国家の問題を含めて〈沖縄経験〉が生じることなどを論じた。この論文のために本研究の調査での成果が利用された。 比屋根著書は、戦後沖縄史の50年代や60年代における復帰運動や思想的な問題提起などについて系統的に論じ、本研究の資料調査の成果が使われている。 さらに1953年の「琉大事件」に関する研究もおこない、前年度おこなった聞き取り調査の記録とともに、テープ起こし作業もおこなった。この成果としては、2010年度に公刊または公表が課題として予定されている。
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