平成20年度は、本研究の軸となるポストモダンダンス(イヴォンヌ・レイナー)とハプニング(アラン・カプロー)の身体論を各々の文脈のなかで明らかにするための基礎的作業を行った。 とくにジャドソン・ダンス・シアター時代のレイナーの活動について、文献収集と調査の点で進展があった。ニューヨークのパブリック・ライブラリー(リンカーン・センター附設パフォーミング・アーツ部門)において、レイナーをはじめとするポストモダンダンスや彼女らに影響を与えたアン・ハルプリンの映像資料・ビデオ収録インタヴューを中心にアーカイヴ調査を実施した。すべて一般には流通しておらずライブラリーでのみ閲覧可能な資料である。ポストモダンダンスを先導したマース・マニングハムおよびジョン・ケージについては、新たに映像資料を入手し、文献研究も続行した。またモダンダンスの専門家であり日本人のポストモダンダンスの代表的な舞踊家ケイ・タケイの研究に長年携わっている埼玉大学教育学部細川江利子氏の研究協力を得て、レイナーやトリシャ・ブラウンらの60年代70年代の作例を分析し、体感的理解を深める機会をもった。 カプローに関してはニューヨークでのライブラリー調査の際にコピー可能な資料を入手するとともに、既刊の文献資料の整理を行った。さらに、戦後美術の種々の活動に散見される東洋思想への傾斜、プロセス志向・瞑想志向型の作品制作についても、アド・ラインハートやアグネスマーティン、ジャスパー・ジョーンズ等の文献・映像資料およびインタヴューの分析によって、新たな知見を得ることができた。上記のパフォーマンス系の活動に対して相互参照する意義が大きいと考える。 平成20年度の成果の一部は、名古屋大学大学院情報科学研究科による「第4回感覚設計国際シンポジウム」で発表し、美学・哲学・メディアアートの研究者との意見交換の場を得た。
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