平成21年度は、本研究の焦点であるポストモダンダンスのイヴォンヌ・レイナーおよびハプニングのアラン・カプローと密接に関係する同時代の実践とともに、その系譜を引継ぐ内外の現代アートの実践に射程を拡大した。 ジャドソン・シアター時代からグランド・ユニオン結成時期のレイナーとの共同作業でも知られるスティーヴ・パクストンの来日が実現したため、横浜・東京・山口各所でのワークショップやレクチャー・デモンストレーションに参加し、山口情報芸術センターでの展覧会(映像インスタレーション)オープンに際してヒアリング調査、公開講演やインタビューを行った。パクストンの研究者福本まあや氏(富山大学)や身体感性論の樋口聡氏(広島大学)とも研究交流の機会を得た。さらに、高橋哲也氏(埼玉大学)の協力によりF.M.アレクサンダー創立の身体調整技法アレキサンダー・テクニークの専門家河上裕彦氏からワークショップ形式で専門的知識の提供を受け、身体論の実践的なアプローチに資するところが大きかった。 前年度に引き続きニューヨークのパブリック・ライブラリーにおける映像資料他のアーカイヴ調査を実施した。渡米時、グッゲンハイム美術館で開催された『第三の心』展のカタログ等の関連資料を入手し、1960年代前後のアメリカにおけるアジア文化への広範な関心についての考察を深めることができた。 第60回美学会全国大会の当番校(東京大学)企画への参加招聘を受けてパネルを担当し、60年代以降のアートが「行」的な身体性の取り込みによってどのように近代芸術の「没大地性」に対抗してきたかという本研究課題の核心部に関わる問題を提起し、近現代美術の専門家林道郎氏(上智大学)および田中正之氏(武蔵野美術大学)と討論する場を得た。また「モノ学・感覚価値研究会国際シンポジウム」(京都大学)において、宗教と芸術の接点を探る学際的な諸研究の実例に触れる機会を得た。
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