第一には、まんが・アニメーション両方の教育の包括的な原論構築のために、表現技法について歴史的研究を行なった。具体的には「絵と言語の連続的な統合による物語性の構築」に注目することで、1820年代以降に出現したヨーロッパ近代まんが以降のコマ割り表現と、1910年代以降のアメリカ・アニメーションの表現の歴史検証を行なうとともに、その表現方法を輸入して受け継いだ戦後日本の静止画と動画の基本的な考え方を検証した。特に戦後日本については、1960年代のまんが及び劇画の表現の多様さに注目して、動画(アニメーションを含む映画)との関連性を検証し、成果を得た。第二には、これらの検証に基づいて、まんが・アニメーション両方の表現の教育に必要となる思考と技法のあり方を明らかにした。それらの教授を具体的に実行するためには、ストーリーボード及び絵コンテ制作の過程を重視すべきであることを明らかにし、その見地に基づいて具体的なカリキュラムを構想した。第三には、そのカリキュラム実施のための支援システムの開発を行なった。まんがとアニメーションのストーリーボードや絵コンテの制作をコンピューター上で統合的に行なうために、静止画と動画の両方を同一ソフトウエア上で扱う目的で「FLASH」をプラットフォームとして採用し、同ソフト上で動く絵コンテ制作ソフトウエアを開発した。第四に、この支援システムをネットワークで統合的に運用することで、多人数を対象とした教授を行なうシステムの開発を行なった。カリキュラムの現実的な運用や効果を検証するためのワークショップ実施の準備を行ない、あわせて絵コンテ制作ソフトの改良を行なった。
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