少子高齢化社会において芸術が高齢者や障害者、病人を治癒するのみならず、社会そのものをも治癒する「効果」をもっていることを1)ヨーゼフ・ボイスの社会彫刻2)アウトサイダー・アート3)環境倫理学の横断的かつ学際的研究によって明らかにし、《厚生芸術》という概念が21世紀の芸術と社会において極めて有効な概念であることを理論と実践現場の双方から理論化、概念化する。 平成21年度は1)ヨーゼフ・ボイスの思想的究極目標の研究と世界的認知度の研究2)1~3に共通するアーティストの社会的役割を「医療福祉とアート」そして「アーティストの雇用」という観点からの研究を進めた。 ・ボイスの究極目標は社会のユートピア化であり、それは芸術(教育+医療福祉+環境倫理)と因数分解できる。水戸芸術館「ヨーゼフ・ボイス展」との共同研究 ・医療福祉は本来アートと不可分のものであり、新たなタイプのアーティストが今後その社会的役割を担う。名古屋造形大学「やさしい美術」との共同研究 ・アーティストの雇用拡大と増進が社会のユートピア化に貢献する。 東北芸術工科大学、東京藝術大学、国立国際美術館との「芸術経済学者ハンス・アビング講演会」共同開催少子高齢社会の厚生を創造性が支えることはヨーゼフ・ボイスの芸術が示したとおりであるが、21世紀の社会では従来型とは異なる社会的意義を担った新たなタイプのアーティストの出現が望まれる環境になってきている。
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