平成21年度は6回の研究会をおこない、7本の研究発表について検討した。20年度に『オカルトの惑星』(青弓社)を公にしたが、そこでの研究成果を受け、80~90年代における<オカルト>の諸相について考察を深めた。具体的には、昭和40年代の特撮作品と90年代のオカルト・アドベンチャーゲームとの関連性、水木しげるのメジャー登場時の受容状況、ネット怪談「くねくね」の発生と展開に対する説話・伝承研究からのアプローチ90年代以降の「実話怪談」の位相、といった問題群である。その一方で、70~80年代のオカルト・シーンに深くコミットした宗教学者の吉永進一氏、テレビ放送の立ち上げ時から放送業界に関わり、「あなたの知らない世界」、霊能者宣保愛子に関する特別番組などに放送作家・コメンテーターとして参加し、「心霊」世界を世に広める上で大きな影響力をもった新倉イワオ氏を講師としてお呼びした。吉永氏からは、京都を中心に活性化していた<オカルト>が世に波及していく様相について主にお聞きし、新倉氏からは、最初期のテレビ業界の模様と、いわゆる心霊番組が誕生し、大きな反響を世にもたらしていくプロセスについてお聞きすることができた。その結果、時代のなかで動きはじめた<オカルト>について、重層的に把握する視点を見出すことができたと考えている。なお両氏の講演と質疑応答は活字化し、報告書の形でまとめる予定になっている。
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