今年度は実際の伝書を収集し、伝承の実態を確認した。現物の発する情報に及ぶものはない。また、これまでの成果発表の一つとして、『秀吉の智略「北野大茶湯」大検証』を発刊した。本書は共著であり全体が334ページからなるが、矢野論説pp.119-183のみならず、総合的な資料編pp.209-317も申請者が作成した。この資料編は、北野大茶湯の伝書て新出の北野天満宮本、利休百会記第三種本を含む)12件、関連資料16件、書状・高札14件、その他11件を網羅したものであり、すべて翻刻を与えてあり、今後の研究の指針となるべく意図している。もとより解題(25pages)と研究史(15pages)も執筆した。 この網羅的な資料編は、様々な異本と関連資料を承知していたことによって可能になったものであり、本研究の実施計画の一環といえる。 論説においても、北野大茶湯記5写本の道具記載を対比した表2(pp.132-135)が核になっており、異本生成構造の考察と、背景で行った数理的処理が基礎となっている。 また、『天王寺屋会記』の客組のネットワーク構造の考察について学会発表を行った(口頭発表は共同研究者山田哲也氏による)。
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