研究概要 |
本年度は関係詞節と主節の論理関係について考察した。 (1) a. *All the students, who had failed the test, wanted to try again. b. All the students, who had returned from their vacation, wanted to take the test. Quirk et al.(1985)によれば、(1a)は制限用法(カンマなし)なら容認されるが、非制限用法では容認されない。一方、(1b)は(1a)と同じ先行詞にもかかわらず、非制限節が容認される。この文法対立について、田中(2000)は関係詞節と主節の原因・理由の関係が影響していると指摘している。具体的には、(1a)では非制限節が主節の原因・理由を表しているが、(1b)ではそれがない。 三木(2001)は(1a)の主節と関係詞節間に因果関係が読み込まれることを前提にしたうえで、主節の因果関係を表しうる関係詞節は当該事態に関わる個体を余すことなく切り取る機能を有する制限節であって、特定の個体について情報を付加する非制限節ではないと主張する。三木分析は関係詞節の制限機能と主節の原因・理由を表す機能を直結する。この真偽を確かめるべく、文法書および言語コーパスを調査した。その結果、非制限節が主節の原因・理由を表すケースは散見され(eg.(2a))、さらに制限節でも制限機能をもたない「非制限節的な」タイプが主節の理由を表すケース(eg.(2b))が見いだされた。 (2)a. Betty's children, who are still young, did not understand most of the jokes. (Declerck 1991: 533) b. She had two sons, who could rely on for help, and hence was not unduly worried. (Huddleston and Pullum 2002: 1065) 以上から、関係詞節の制限機能と主節の原因・理由解釈は表裏一体ではないという結論に達した。(1a)は先行詞から数量詞allを省くと容認されるのだから、原因・理由を表す非制限節が先行詞の数量詞と相性が悪いということになるが、それについてはさらにデータを追加して議論しなければならない。
|