本年度は3年計画の初年度であり、基礎的データの収集や既存の「失語症構文検査」の検証を行った。村尾治彦准教授の言語学研究室では、すでに、学部の学生と言語聴覚療法の検査、訓練を観察、症状と検査、訓練の関係を分析している。平成20年度は、この作業に日本語教育研究室の馬場良二教授が加わり、データを収集した。データ収集には研究協力者の大塚裕一、宮本恵美氏の協力を得た。村尾准教授は、日本認知言語学会に参加し、本研究に生かすべく認知書語学の最新の動向調査を行った。 また、「失語症構文検査」の妥当性を日本語教育、認知言語学の側面から分析、評価を行った。具体的には、この検査で使われている日本語文を分析し、検査目的に対するその文の妥当性を、特に、難易度の面から考察した。また、使用される絵カードの妥当性も検証した。結果として、既存の構文検査では、使用されている構文に偏りが見られるため、全体的な日本語力の診断や訓練に生かすことが難しいことが分かった。この結果を受けて、格助詞に基づく日本語の基本的な構文パターンを選定し、各構文毎の基本例文を作成し、既存の構文検査に代わるものを作成する作業に取りかかった。 また、日本語教育や言語学の知見を生かした失語症者の言語訓練の開発のための研究調査の一環として、熊本県立大学特別講座「失語症会話パートナー講座」を2回開催した。講座では、失語症、失語症者の言語訓練に関して専門的な知識や技能を持っている実際の医療現場で働ぐ言語聴覚士に協力を依頼した。
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