構音障害に引き続き、発語失行により発話に障害のでる症例の音声、および、発話中の画像を収集、記録、分析した。発語失行とは、言語野自体の損傷はないが、脳内の言語プログラムの読みとりをする機能が損傷をうけ、言語運用に支障をきたすものである。この症例では、とくに音調、ピッチのコントロールの変容が大きい。しかしながら、一つ一つの音長をたもつ努力、発話末と談話末でその終了をしめす文末イントネーションなどに工夫が見られ、音調自体のコントロールがすべて失われているわけではないことが明らかたとなった。また、自分の能力を客観的に判断し、音調が不自然に平坦になる点を補うよう、音声的な工夫をしていることを実験音声学的に検証した。この成果は、2011年7月のInternational Congress on Sound and Vibrationで発表の予定。 失語症者の言語知識の解明については、動詞を中心とした構文カテゴリーおよび助詞ニのネットワークカテゴリーをモデル化し、失語症者の重症度ごと、障害タイプごとに課題の誤答、正答パターンを整理、分析し、プロトタイプ用法を軸として、ネットワーク上どこまで機能が残存しているのか、あるいはアクセス可能な状態となっているのかを明らかにした。この成果は2010年6月の日本言語聴覚学会で2件の発表で公表し、内1件は内容を評価され、同学会学会誌への投稿依頼を受け、投稿し、現在審査中である。
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