平成21年度は、前年度に引き続き、本研究の第一課題である「外国語(英語)習得・運用と対人コミュニケーション能力との関係性の理論的・実証的考察」のうち、日本人の対人コミュニケーション能力の測定方法に関する理論的検証、実際の測定方法(質問紙調査票)の開発、実施、その結果の分析を行った。具体的には、構成主義コミュニケーション論の対人コミュニケーション能力に関する理論的枠組みを日本人話者において検証するため、対人コミュニケーション認知構造の構成要素である「認知的複雑性」と個人的なメッセージ産出・解釈傾向である「メッセージデザインの理論(MDL)」に着目し、この二つの変数が日本人話者においてどのように相関するのかを観察した。昨年度の調査に加え、新たに日本人大学生約100名(女性75、男性25)を対象に、RCQ(ROLE Category Questionnaire)と呼ばれる自由記述式質問紙票(日本語版)による「認知的複雑性」の計測と、Elicitation法(質問紙)による「MDL」の計測を行い、日本人と英語話者のMDLの分布の違い、および日本人における認知的複雑性とMDLの相関を分析した。結果は、前年とほぼ同様、コミュニケーション能力(認知的複雑性)とメッセージデザイン(MDL)の関の汎文化的傾向の可能性を示唆するものとなった。この結果を受け、第二課題である「コミュニケーション能力」と「英語能力」もしくは「英語学習能力」との関連について分析方法を検討し、共分散構造分析による分析に着手したところである。最終年度の平成22年度には、対人コミュニケーション能力と外国語(英語)習得・運用との関連を詳細に検証し、教育学的な示唆を探究する予定である。
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