平成20年度は、本研究の開始年度として主として政策過程についての聞き取りを中心に関連団体及び現地調査にあたった。研究代表者の川崎は、(1)長崎県対馬、(2)東京都小笠原、(3)沖縄県石垣島にて離島振興に関わる関係機関関係者から聞き取り調査を実施した。また同調査には、研究協力者である山田吉彦氏が同行した。(1)対馬では、海上保安庁、対馬市役所と商工会への取材により、大韓民国からの観光客への対応が進められている現状を、(2)小笠原諸島では、小笠原村役場への取材によって歴史文化を基盤にすえた国際的な観光計画が立てられていること、また(3)石垣島では青年会議所メンバー等が、同島の振興にあたって、伝統工芸を利用した産業振興を計画していることが分かった。 分担者の牛尾は、初年度において、その研究目的である離島に関する「海洋基本計画の策定プロセスの法学的研究」を海洋基本法の制定過程及び本法以前の関係法を中心に調査した。まず海洋基本法との関係では、本法の制定の主要機関であった「海洋基本法研究会」の議事録を(社)海洋産業研究会において調査すると共に本研究の研究協力者である同研究会の常務理事(中原裕幸氏)より「海洋基本法研究会」での議論に関する聴取を行った。また、本法制定以前の離島に関する法のうち、日本の離島政策を象徴するものとして「奄美群島振興開発特別措置法」を取り上げ、その実施システムを平成21年の改正過程をモデルとして、国(国交省)、地方(鹿児島県庁、奄美群島)それぞれの政策に対する見解とその調整過程での問題点を鹿児島県庁及び奄美大島での現地調査により解明を図った。 本研究の意義は、海洋基本法及び海洋基本計画の策定実施が、離島という「現場」に与えている影響を分析することにある。そのことにより、住民の意識と行動、両側面から政策を研究する重要性があると言える。
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