本研究は、「水俣病」の発生によって、水銀のもつ有毒性について世界の目を開かせた国であるわが国が、国境を越える汚染が問題となっている現在の水銀問題への対策に関して、世界で主導的な役割を果たしている北欧諸国や欧州委員会等と協力して問題に取り組むことができるように、先行する取組を調査した上で、わが国における様々な水銀をめぐる法令等の規定を整理し、水銀を可能な限り身の回りから除去するための取組のあり方を探ろうとするものである。 平成20年度には、当初、先進的な水銀対策を進め、それを世界レベルでも実践しようと国際的なルール作りにも取り組んでいる北欧諸国等でのヒアリング調査を行う予定であった。しかしながら、水銀問題への国際的な取組の1つとして、遅々として進まないものの、その制定が提唱されている水銀規制の条約作りの動きが、米国大統領に就任したオバマ氏の方針によって大きく影響される可能性が高かったため、流動的な状態で調査を行うよりは、国際的なルール作りの場の一定の方向性が決まるまで待った方が良いと判断し、ヒアリング調査の実施を延期した。したがって、平成20年度には、我が国における水銀の使用状況や、水銀に係る法規定等の資料の収集および整理に努めた。海外でのヒアリング調査の際には、わが国の状況についての情報提供を行うことも重要であると考えられるため、わが国における水俣病に関する研究の進展の成果についてや、水銀の使用・排出状況等を示す各種の資料等について、アップデートを行いながら整理し始めることができるようになっている。また、水俣病の研究から明らかにされつつある有機水銀の慢性毒性についての科学的知見についても、申請者が関与してきている共同研究に引き続き協力して、その理解を深めることができた。
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