研究概要 |
平成20年度は, 既存の政党類型を政党の競争戦略をメルクマールとする新たな類型に変換するための理論的検討作業を進めることを計画していた。そして年度前半は当初の計画どおり, これまで政党組織構造に着目して提唱されてきた代表的な政党類型を取り上げ, それらがいかなる競争戦略と親和的なのか(あるいは, いかなる競争戦略が採用困難なのか)について考察を加えた。P・メアーの近年の政党間競争構造論が特定の政党類型とリンクしていることを指摘した, 2008年度日本比較政治学会研究大会報告は, かかる作業の一環として行ったものである。ところが, 年度の後半になって「政党システム」概念に対し再検討を加え始めたところ, 政党組織構造の特色に着目する政党類型論のみを, 変換を加えるべき政党類型論として取り上げる積極的な理由が, 実は乏しいことに気付いた。そして, この観点から急に重要性を帯びて見え始めたのが, かつて連合理論研究の知見に基づきM・レイヴァーが「政党システム」の複数性を指摘し, 同じく連合理論研究者のK・ストロームが, office-seeking/policy-seeking/vote-seekingという3つの政党(行為)類型を提唱していたという事実である。停滞している政党システム論の抜本的な刷新を図るには, 既存の政党(組織)類型を政党競争戦略類型に変換し, それを政党システム類型に接合するといった, 微温的なアプローチでは限界があり, むしろ政党類型論において主流をなしてきた政党(組織)類型論そのものの価値・意義を疑ってかかる必要があると考えるに至ったのである。これは当初の研究計画を大きく超える課題であるため, 今後慎重に考察を進めてゆく必要があるが, すでに年度末から, 他の政党研究者との意見交換を行いつつ, かかる観点から導かれる全く新たな「政党システム」論の構築作業を始めたところである。
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