研究概要 |
本年度は,連合理論研究の分野で提唱された政党行動(目標)類型論と政党システム論の接合可能性を集中的に探る予定であったが,それに先だって「政党ミステム」概念の再検討を行った結果,「政党間競争から生じる相互作用のシステム」という,G・サルトーリのダイナミックな「政党システム」理解の正当性を再確認するも,サルトーリ本人のみたらず後継者たるP・メアーでさえも,この「政党システム」理解に徹せられていないこと,そしてそれは,これまで政党システム研究者が政党間競争について,実は十分な考察を加えてこなかったとい事実に起因ことに気がついた。さらに,「政党間競争とは何であり,またいかなる競争が展開されているのか」という根本的な問いを考えるうえでこそ,政党行動(目標)類型の複数性についてのK・ストロームの指摘が重要であると確信するに至った。かかる知見を踏まえ構想したのが,<政党間競争・政党システムの連鎖モデル>であり,それは,複数の政党間競争とそこに生じる複数の相互作用システム(=政党システム)が,競争結果(システム出力)が次の競争のひとつの初期条件(システム入力)を形成するという形で時系列的に連鎖する構図を端的にとらえようとするものである。当初,新たな政党類型論との接合を通じた政党システム論の刷新を企図した研究は,政党間競争理解の抜本的見直しを通じた政党システム論の刷新という,より挑戦的な試みに転じたと言えよう。本年度後半には,政党研究の中堅第一人者たちとの対話を通じてこのモデルの妥当性を探るとともに,さらに広く学界に問うべく平成22年度日本比較政治学会研究大会で研究報告を行うこととし,その準備に着手した。なお,既存政党類型論の変換という微温アプローチの限界が明らかになったこともあり,当初本年度に予定していた海外での文献資料収集活動は,その必要性を再検討したうえで見送ることとした。
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