研究概要 |
平成20年度では具体的には(1),(2),(3)のような研究を行った。(1)代替案の数が有限の場合において、最大化基準に基づく選好判断を事前選好と事後選好にわけて考え、それぞれの公理論的な構造と、それらの関係を考察した。その結果を'State-dependent strength of preference'という論文にまとめている段階である。特に、基数比較を基にする事後選好と序数比較を基にする事前選好との整合性を要求する公理により状態依存型の主観的期待効用モデルを導くことができた。(2)意思決定問題の枠組みを(a),(b),(c)のように結果または事象の少なくとも一つについて客観的な特定化を行わない場合の研究を行う。ここで、(a)代替案と事象の組み合わせを条件付選択文象と見なす(結果の客観的な特定化はしない)、(b)事象を代替案から結果への写像と見なす(事象の客観的な特定化はしない)、(c}代替案のみを考える(結果と事象の客観的な特定化はしない)である。特に、それぞれの意思決定問題における適切な定量的選好表現を探すための研究を行った。ここでは、応用可能性を考慮に入れ操作性の高いモデリレ化を目標とした。その中で、基礎的な研究成果を'Multiple linear utnities for partially ordered preferences'という論文にまとめている段階である。これにより、柔軟性選好を表現できる一般的なモデルの公理系を構築することができる。(3)不確実性下の経済学における意思決定問題の類型化を行い、意思決定問題の完全な記述可能性の問題点の整理するため、不確実性下の経済学の各種モデルについて広くサーベイを行った。特に、不確実性下の経済学における意思決定モデルにおける柔軟性および部分集合選択に関する考え方について広くサーベイを行い、文献のデータ・ベースを作成した。
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