研究概要 |
本研究の目的は、学習機械サポートベクターマシン(SVM)と研究代表者の提案するノンパラメトリック局所相関分析法による、金融バブル生成・崩壊の予測及びメカニズム解明である。バブル期データが少ない一方、関連要因は非常に多く、高精度な予測・分析は原理的に極めて難しい問題である。 多種の月次経済・金融データを学習して途上国の通貨危機警報を発する学習機械を、SVMとニューラルネットワークについて予備的に作成してみたところ、両者とも重回帰モデルなどの単純なモデルより性能が劣った。この結果は、途上国の月次データが、多数のデータ系列を学習する複雑なモデル作成に十分な情報を含んでいない可能性を示唆するものである。 解決策には、1)利用するデータを日次以上の高頻度データやノイズの少ない先進国データに限定することで情報量を増やす一方で、2)少ない系列の訓練データにバブル期特有の特徴を凝縮させ、学習対象モデルを簡素化することがある。2)については、局所相関分析によりバブルの生成・崩壊と関連の深い変数を選別し、その変数同士の関係の全体像を事前に把握することが有効である。 Takada(2008, EJ)は局所相関分析の精度を左右するノンパラメトリック確率密度推定法の比較分析を行い、金融データについて推計精度が高い方法を選別した。またTakada(2008, FEMES, DMSS)は、局所相関分析により株式の価格変化と取引量の関数関係及びインパルスーレスポンス関係の全体像を信頼区間と共に視覚的に示し、幾つかのstylized factsを発見した。発見された変数の関数関係のモデル化には、Takada(2009)のロバストな潜在変数モデル推定法が利用できる。これらの手法により、バブル期特有の相関構造パターンを凝縮して表現する学習対象の選別が可能になった。
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