1990年以降、多くの国ではGDPは上昇したが、アフリカの国々は停滞を続け、あるいはマイナスの経済成長を経験している。こうした中で、世銀やIMFの支援による市場自由化政策がアフリカ各国で強力に進められている。しかし、こうした市場自由化政策については様々な批判もなされている。この点について、現状を確認するのが本年度の課題であった。 この課題に答えるために、最も長期にわたって世銀・IMFの構造調整政策を実施してきた国の一つであるセネガルを取り上げ、関連するIMFの報告書と国際NGOの報告書を比較検討し、さらにセネガルの協同組合の連合組織であるCNCR(農民連携全国センター)を訪ね、理事長のサンバ・ゲイ氏にインタビューを行うとともに、ティエス県ダル・クドス村の協同組合UGPNを訪ね、組合長のパテ・ジャ氏からお話を伺った。 世銀・IMFは、セネガルにおいて市場自由化政策が必ずしも成功しなかったことを認めているが、はじめの予測が楽観的すぎたことや世銀・IMF側のガバナンスの問題も指摘する一方で、むしろセネガル政府のオーナーシップの問題の重要性を指摘している。しかし、セネガル側から見ればむしろ問題は、市場自由化政策によって、自国政府に保護された欧米資本によって、これから育とうとしていたセネガル資本がつぶされ、時には飢饉に至りかねない状況が引き起こされたことにある。農村でもやはり、従来の協同組合は破壊的な影響を受け、厳しい状況にある。しかし他方で、住民独自のイニシアティブによる経済活動も活発である。今後は、これらの活動がどのように農民の生計を支えているのかを、農村調査を通じて明らかにしていく必要がある。
|