本研究は、日本のソフトウェア産業の現状に対して問題意識を持ち、特に、日本のソフトウェア開発の技術水準を高める方策をみつけること、及びそのための独自の理論的枠組みを提示することを目的とした研究を行う。日本のソフトウェア産業は、日本特有の巨大な多重下請け構造を持ち、その下層には技術水準の低い企業が多数存在する。この問題をどう克服して行くかが、本研究を進める上で大きな課題となる。 今年度は、日本と中国の多くのソフトウェア企業への聞き取り調査を行った。なかでも、非公開の開発仕組みや開発実態と特性などをより正確に把握することに努めた。これにより、ソフトウェアにおけるオフショア開発の全体像を解明するとともに、理論面および実証面の両面において、日中のソフトウェア企業間関係に関する研究を深化させることに役立った。こうした取組みを通じて、本研究は、日本と中国双方のソフトウェア産業の発展に大きく貢献するものとなろう。 来年度は、今年度の調査をもとに、本研究が探求するオフショア開発のパートナー型モデルを理論的及び実践的の両方の観点からさらに発展させる予定である。企業運営の観点からも望ましいパートナーのあり方を探求するだけでなく、産業レベルにおいても、望ましいあり方を提示する。また、技術面において、どのような開発のあり方が望ましいのかを明らかにする。これにより、本研究が目指す、日本と中国双方のソフトウェア産業の発展のあり方を提示するつもりである。
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