エフェメラ・メディアのデータベースを構築するために、2009年度に引き続き、これまで収集してきた第二次世界大戦時の対日宣伝ビラの画像を同定しながら、全部で約8600点の資料画像を入力し、これを同一のビラごとに整理して番号を振り、各ビラの複数のイメージと英文説明資料をまとめて一つの項目として引き出せるようにした。その結果、約1700種類の対日宣伝ビラの資料が存在することが確認された。このうち、約350種類が英国制作、約350種類がオーストラリア制作、約800種類が米国制作であり、残り約200種類は中国制作また制作国不明のものである。 さらに各ビラの日本語の文章をテキストデータとして入力した結果、キイワードによる検索が可能になった。これによる得られる幅広い知見の一部を示せば、日本人では「陛下」(67)という語による天皇への言及が多く、「天皇」(54)には明治天皇(9)が含まれ、「東條(首相)」(56)が次いで多いこと、国では「米国」(254)が最も多く登場するが、次いで「ドイツ(獨逸など)」(233)も多いこと、地名では「東京」(246)が最も多い以外は、「ビルマ」(199)「比島(フィリピンなど)」(187)など戦闘に関係した場所が頻出すること、敵国の軍隊では、「連合軍」(404)「米軍」(398)の言及が多く、他は「英軍」(81)「濠軍」(7)と極端に少ないこと、「爆撃」(308)は頻出するが、「原子爆弾」は1件しかないこと、「戦友」(176)よりも「指揮官」(143)「司令官」(119)への言及が多く、また戦争の責任の所在は、「軍閥」(112)に求められていること、戦争に否定的な「敗戦」(78)「戦死」(76)などの語が多く登場する一方で、「平和」(197)「自由」(125)「戦後」(121)といった肯定的で希望のある語も多いことなどが明らかになった。 研究計画では、制作に関する情報や資料、流通散布や受け手に関わる情報などを付加する予定であったが、今年度ではビラの画像とテキストのデータベースを完成するだけで精一杯であり、その公開と拡充は今後の課題である。
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