本年度は、公共交通撤退の危機に陥った経験のある鉄道の調査を実施した。1、茨城県において公共交通撤退の危機に陥ったものの第3セクター方式で存続が決定したひたちなか海浜鉄道の調査、2、福井鉄道福武線の調査及びえちぜん鉄道の調査、3、秋田内陸縦貫鉄道の調査である。とりわけ、茨城県では、ひたちなか海浜鉄道が存続しなかった場合、日立電鉄、鹿島電鉄についで、近年3つめの鉄道廃止ということになるため、地域そのものが存続にかけて、大きく動いた。 鉄道が廃止の危機にさらされた地域で自治会や商工会が動いたことは大きな意味を持ち、民間の鉄道(あるいは第3セクターとして旧国鉄から受け継いだ経緯のある鉄道)は地域によって支えられていることがよく理解できた。 今回の調査の大きな発見は、少子化の問題に直接関係していることである。当初、この研究に入ったときには、高齢化した地域の足をどのように確保できるのかが研究のテーマの一部であったが、研究をすすめていくにあたって少子化そのものの問題であることがあぶり出てきた。少子高齢化としての問題にしてしまうと少子化の問題はみえにくいが、鉄道の存廃問題では交通弱者としての中学生・高校生の存在がクローズアップされ、彼らの通学によって鉄道が支えられていることが秋田内陸縦貫鉄道やひたちなか海浜鉄道でも明らかとなった。例えば、一人の高校生が通学定期を利用することで、利用者数(乗降人数)が年間で500人になる。単純に利用者数だけが鉄道存続の鍵になるわけではないが、目安として利用されているだけに、安定した利用者の確保は重要になってくる。しかしながら、ひたちなか海浜鉄道と秋田内陸縦貫鉄道でも、高校の統廃合問題が関係し、今後の利用者減は目に見えている。鉄道存続の条件については、利用者数だけでなく、別のわかりやすい指標を探る必要があることが今後の課題として考えられる。
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