本研究の目的は近年イングランドで取り組まれている多職種協働によるチーム・アプローチのプログラムに基づき、地域に潜在化する「リスクがありながら援助を求めない家庭」に対応する方法を検討することにある。方法として、(1)イングランドの研究者との意見交換、(2)有識者・実践者へのヒアリング、(3)ケース検討、を行った。結果は下記の通りである。 住民に身近な市町村は、予防の観点から地域のすべての子どもと家庭を対象にホリスティックな支援システムを構築し、これによって潜在化したニーズをキャッチする。このためにはユニバーサルサービスの質向上と豊富なメニューの拡充が求められており、アウトリーチによって、援助を求めない家庭にも届くようなシステムが必要である。さらにケアは単独ではなく、関連機関・施設・社会資源と連携して実施する。特にネグレクトのように、「リスクがありながら援助を求めない家庭」に対応する際には、ソーシャルワーカーが一貫して全体を把握しマネジメントすることで、子どもが必要としていることをケア担当者に引き継ぐことができ、ステージが変化しても、それぞれの機関・施設が果たす役割を変化させながら、子どもが安心できる環境を確保することができる。市町村の現状をみると、要保護児童対策地域協議会等の虐待防止ネットワークの整備は進んでいるが、子育て支援等のネットワークとリンクしていない場合が多いことから、他領域とつながりにくく、限定された対症療法にしか活用できないものとなっている。関係機関間の共通認識をつくり、ネットワークを用いた積極的な介入を行う上での課題は、アセスメントの専門性の確保・向上、さらにケースによっては親も含めて援助プランを共有することである。
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