本研究は近年イングランドで取り組まれている多職種協働によるチーム・アプローチのプログラムに基づいて、地域に潜在化する「リスクがありながら援助を求めない家庭」に対応する方法をとりあげ、これを日本においても科学的根拠に基づき効果的に実施する方法を明らかにするものである。具体的には東京都こども家庭支援センターを対象に、アンケート調査を実施し、その実態を明らかにした。また援助を求めない家庭を支援する際のソーシャルワークスキルと効果的な要素・影響を及ぼす要因を明らかにするために、グループ・インタビューを実施した。 子ども家庭支援センターは地域にネットワークを構築し、これを通して潜在的ニーズを早期にキャッチし、予防活動から虐待対応、親子再統合までの一貫した支援を可能とする地域づくりに取り組んでいる。この子ども家庭支援ネットワークを機能させるためのシステムやマネジメント・多職種協働・アウトリーチ等のソーシャルワークの取り組みについては、これまで検証されてこなかった。本研究の独自の視点は、地域にどのようなシステムをつくり、ネットワークに基づいたソーシャルワークの取り組みを展開すると、援助を求めない家庭にアクセスし、包括的な支援を行うことが可能になるかを明らかにしたところにある。地域に根ざした日常的・継続的なエンパワメントを基盤としながら、さらに多機関連携によりタイミングを創出して介入する課題解決型アプローとを統合化することができるネットワークの形成に関して、特に子どもと家庭に関わる地域関係機関・施設・社会資源間の合意をいかに形成するか、家庭にいかにアセスメントするか、家庭の潜在的なニーズキャッチと的確なアセスメントのための要素を抽出した。 これによって、潜在的なニーズを持つ家庭にアクセスし、地域において子どもと家庭の双方を対象に早期から一貫した総合支援を行うことができる。
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