研究概要 |
本研究は,従来の問題対処的な「教師のバーンアウト(burn-out)」という病理モデルではなく、教師のQOL(Quality of Life)を積極的に向上させていくための「エンジョイ・イン(enjoy-in)」エンパワーメント・モデルを構築することを目的としている。このモデルは、単なる状況分析に留まるものではなく、具体的なサポート手続きを導き出すための戦略的なものを指向している。つまり、研究の全体的な構想は、新たな教師へのメンタル・ヘルス支援のための方法論を確立することにある。そして、本研究は、従来のモデルを根本から見直し、再構築していくことを目的としている。そのため、初年度は「たたき台」となる<エンジョイ・イン>モデルの設定と、アクション・リサーチを実施するフィールドを選定することにあった。モデルの「たたき台」の作成にあたっては、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(Acceptance & Commitment Therapy; ACT)という個人対象のセラピーの発想を「組織行動マネジメント」に拡大した方法論を参考とした(Hayes, Bond, Barnes-Holmes, & Austin, 2006)。本研究実施者(武藤)は、08年9月まで、所属大学からの支援を受けて、当該の方法論の第一人者であるSteven C. Hayes博士の所属するUniversity of Nevada, Renoに客員研究教授として滞在していたため、直接に、この<エンジョイ・イン>モデルの「たたき台」となるコンセプトに関する討論をおこなった。その討論に基づいて、University of Nevada, Renoの所属する日本人留学生(外国生活のため多大なストレスを抱える対象として)を対象に予備研究を実施した(08年4月〜9月)。
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