本研究の目的は、大学教養教育の枠組みの中で、障害やバリアフリーを学際的なテーマとして扱う授業を展開していく際に有効となる教授法や教材を提案することにある。 平成21年度の主要な成果としては、(1)東京大学教養課程の学生を対象とした、ゼミナール方式の授業プログラムの実施、(2)障害やバリアフリーについて学際的に学ぶための包括的な文献リストの作成、(3)本研究全体の成果をまとめた研究報告書の作成、が挙げられる。 以下、それぞれの成果の具体的内容を記すと、まず(1)の授業プログラムの実施については、(a)研究代表者及び「プロジェクト」のメンバー計5名の教員によるグループティーチング方式を採用し、(b)「メリトクラシー」(=能力主義)という観点から障害をめぐる問題にアプローチするような授業内容を展開した結果、専門分野の枠を超えた学際性豊かな授業プログラムの実施が可能となった。次に、(2)の文献リストについては、(a)5つのカテゴリー×4つのサブカテゴリーからなる分類方法を採用し、(b)それぞれの文献についてコメントを付すことで、文献リスト全体における各文献の位置付けが明確になるよう工夫した。その結果、障害やバリアフリーをテーマとした授業での活用以外にも、広く利用可能な文献リストを完成させることができた。なお、完成した文献リストについては、今後もインタラクティヴな更新作業を行っていけるようウェブ上で公開している。最後に、(3)の研究報告書は、上記(1)(2)の作業を通して得られた研究成果の他、本研究の推進に関連して開催したシンポジウムや内部研究会での発言内容なども盛り込んだものとなっている。研究報告書については、今後、自由にアクセスできるよう情報を電子データ化し、ウェブ上で公開する予定である。
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