今年度は研究2年目にあたり、大きくふたつの成果を得た。ひとつめは、冒険遊び場におけるリスクマネジメントのためのワークショップの基礎研究と実証的な実践研究を行った。子どもの体験活動に関わっているスタッフを対象としたワークショップでは、遊び場に潜むリスクを洗い出し、実際の事故などを想定しながらリスク回避やリスクに向き合う姿勢を確認することができた。体験活動に関わる実践者は、経験や勘に頼ることが多いため、少し距離を置いて討議することの重要性が伝わった。加えて、損害保険や賠償保険の視点からリスクを管理するという新しい手法を日本損害保険協会との連携によって、試行的に開発した。これらの成果を研究成果報告書にまとめている。 もうひとつは、ロンドンのアドベンチャープレイグラウンド(冒険遊び場)における調査である。50年以上の歴史をもつランベス地区の冒険遊び場での調査は、教育行政の取組の一端を確認するとともに、地域社会の子どもの成長(遊びを通した成長)への願いを確認することができた。通常の子どもたちの放課後や休日の居場所としての位置づけはもとより、発達障害児や育児放棄(ネグレクト)の家庭で育つ子どもたちの居場所としての冒険遊び場という位置づけも理解することができた。複雑な社会の中で、さまざまな意味が付与された冒険遊び場の役割について再認識することができた。ロンドンの冒険遊び場におけるリスクマネジメントについては、ロンドンプレイにて資料を収集することができ、現在とりまとめをしている過程である。
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