本研究の目的は、多文化社会において顕在化するイスラモフォビアに対して学校教育がいかなる対応を求められるかを探るべく、その理論的動向を踏まえた上で、英国のムスリム多住地区の学校を事例に行政支援体制や学校現場での取り組みを分析し、アンチ・イスラモフォビア教育(AIE)の有効性と今後の実践的な課題を示すことにある。平成21年度は「AIE支援体制および教育現場の実態分析」を中心に、以下のように研究を実施した。 1.AIEに関する官民による支援体制とネットワーク作りについて:FAIR(Forum Against Islamophobia and Racism)やAMS(Association of Muslim Schools of UK)等のAIE支援組織(教育行政組織、NPOなど)を選定した上で、同組織を訪問して、調査を行った。そ結果、各組織が学校向けにムスリム児童生徒を受け入れる上でのガイドラインを作成し、配布するなどしているものの、統一した指針が十分に示されていないことが明らかになった。 2.AIEの推進校、研究校での実践状況について:AIEの実践を積極的に行っている推進校、研究校を選定した上で、同校を訪問して、インタビューや資料収集等の調査を行った。その結果、各学校の取り組みにはムスリム支援組織の関与が欠かせないこと、実践レベルでは教師の力量や方針により内容に差が出ることが明らかとなった。 3.研究成果の公開方法の検討:(1)調査結果の集成、(2)研究成果報告書の取りまとめ方、(3)学会等での研究成果公開方法、について検討を行うとともに、資料の収集整理とデータベース化を継続実施した。
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