研究課題
萌芽研究
ローレンツ多様体のような不定符号をもつ軽量の空間に対しては、均質な局所幾何構造から大域的な構造がどのように決定されるか(不連続群の理論)は、今なお大きな謎に包まれている。不連続群による商空間(局所対称空間)の上のスペクトル解析については、ラプラシアンが楕円形ではなくウルトラ双曲型になり、その解析には従来の手法の根本的な転換が必要であり、いまのところ成功した例はない。この萌芽研究では、スペクトラムを具体的に与えることができるような最初の成功例を提示することを目指している。平成20年度は、複素3次元のある開多様体の上に、リーマン計量と符号(2,1)の不定値ケーラー計量を構成し、そのいずれをも保つ余コンパクトな不連続群が存在することを証明した。さらに、上記の2種類の計量に対応するラプラシアンとウルトラ双曲型の2階の微分作用素の同時固有関数を(不連続群の商を取る前の大域擬リーマン対称空間上で)構成した。その解空間は無限次元であり、擬ケーラー等長変換群とリーマン等長変換群の両者が作用している。前者から後者への対称性の破れを記述する分岐則には連続スペクトラムが存在しない(離散的分岐則)例にもなっている。この結果は、アメリカ数学会の学術誌Cotemp. Math. に掲載予定である。
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Sugaku Exposition, American Mathematical Society (To appear)
ページ: 29
Representation Theory and Analysis on Homogeneous Spaces(H> Sekiguchi, ed.)RIMS Kokyuroku Bessatsu B7
ページ: 1-12
Contemp. Math., Amer. Math. Soc. (To appear)
ページ: 15