研究概要 |
研究1.代数的極小曲面のCohn-Vossen不等式は代数幾何的で説明されるが,これ普遍被覆面と被覆変換群の組に対して定式化しようとすると代数幾何では説明できない現象が現れる.それは被覆変換群の作用がユークリッド幾何をどのように歪めるかという問題である.この観点から集団的Cohn-Vossen不等式を証明した.この応用として代数的極小曲面のガウス写像を普遍被覆面に持ち上げたものの最良の誤差項評価の対数微分の補題を証明することができた. 研究2.代数的極小曲面のWeierstrassデータは周期条件を満たす.周期条件は代数幾何の枠組みに乗らない.筆者は普遍被覆面と被覆変換群の組に対するNevanlinnam理論の立場からの研究を追求した.アイディアは,筆者が開発した幾何的対数微分の補題である.周期条件の情報を含む対数的1形式をリーマン球面上に考えてそれに幾何的対数微分の補題を適用することによって,周期条件からNevanlinna理論的な等式を導くことができた.研究1,2の応用として「代数的極小曲面のガウス写像に対する第2主要定理を示すことができた. 研究3.Einstein計量の拡張概念としてRicci流の古代解を使うというアイディアを正の四元数Kaehler空間のtwistor空間の自然な崩壊に適用するという実験的研究を行った.この試みはtwistor空間では実現できないが,ホロノミー束に持ち上げれば実現可能である.この試行錯誤で構成したのは横断的Einstein計量を中心とする横断的Ricci流の古代解というべきもので,佐々木多様体の横断的ケーラーアインシュタイン計量と類似した概念である.この方法論は余次元1のアインシュタイン計量たとえば3次元射影空間上の新しい余次元1のアインシュタイン計量の構成に使える.また,正の4元数Kaehler多様体はWolf空間に限る,というLeBrun-Salamon予想の解決に繋がっていく.
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