本研究では、生物個体群ダイナミクスの一つである「侵入」と「阻止」という相反する効果によって引き起こされる複雑な生息パターンの出現を数値解析の観点から扱った。そのためには新しい数値計算法である階段関数的メッシュ生成法が必要であり、それについて研究を遂行した。本年度は空間1次元の場合について考察した。扱う数理モデルには非線形双曲型方程式(Riemann問題)が含まれていることに留意して研究を遂行し、以下の実績が得られた。 1.扱うRiemann問題が区間毎に流量が変化する交通流モデル方程式の拡張になっていることが得られた。これによって、問題の困難さは特にエントロピー条件に起因していることが分かり、現在、解決の糸口が見つかりつつある。しかもそれは数学的に十分解決されていないことが分かり、新しい方向に向けての発展が期待できることにもなった。 2.階段関数的メッシュ生成法による計算法を以下の項目を踏まえてアルゴリズムの理論を構築しつつある。 ・各時刻毎に生成される空間メッシュは不等間隔メッシュになるということ。 ・不等間隔メッシュ上でのRiemann問題に対する数値解法であること。 ・数値的安定性、収束性が保証されること。 3.区分的空間一様な数値定常状態と思われる数値解を初期値として再度計算を行いその結果を吟味するために多倍長計算法の技術をワークステーションに準備した。 4.「侵入」と「阻止」が引き起こす定常住み分けパターンについて、その第一段階として、1種モデルによる住み分けパターンの「分離と併合」に関する数学的結果が得られた。そのキイポイントは数値計算結果と特殊解の構成によるものであった。
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